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【どう撮り,何を作成する? 手術支援に役立つ3次元CT画像 】著者インタビュー:奥村 秀一郎さん

注目の方にインタビューする企画「ラジくるインタビュー」。

インタビューを行ったのは、今最も注目されている書籍の著者である奥村 秀一郎さん。

今回、出版に至る経緯〜現場での実運用までをお聞きしました。

診療放射線技師を主な対象として,3次元画像を手術前の術式検討やシミュレーションを目的として作成・活用するために最適な画像の撮り方から,どんな角度でどんな種類の画像を作ればよいかまでを解説。
済生会熊本病院で作成された新人教育用の3次元画像作成マニュアルをベースに,技師が知っておきたい手術の術式や術野の解説,画像をオーダーした医師が求めているポイントを掲載。さらに,マニュアル内の「運用」部分についても付録として掲載。
(引用:メジカルビュー社)

目指すはマニュアルの情報共有・標準化

ーー本書を作成しようと思ったきっかけは?(奥村さんの苦労した経験から?医師主導ですか?)

奥村 私自身が、仕事をする上で情報共有・標準化を大切に考えており、以前からマニュアルの作成・整備を推進し、マニュアルについて発表などもしていました。

院外へ出すと、「マニュアルが欲しい」、「これ売れるのではないか?」と言っていただくことがあり、私もいつの間にか書籍としてまとめて世に出したいという思いが高まり、作成に至りました。

ーー作成に至る前に医師とどんなやり取りがあったのでしょうか?

奥村 作成にあたり、改めて各診療科医師に何を求めているのかを詳しくヒアリングしてみると、それまでの3Dが想像以上に情報不足で、もっと必要な部分を見せ、不要な部分は見せない情報量の多い3Dを作ることができる事に気づきました。

この情報を技師へフィードバックして、更に画像が持つ情報を引き出し、医師の需要を満たすために日々ブラッシュアップしています。

例えば、3D作成の際にただ1回転回すのも0°〜330°(30°刻み12枚)で作成されるのですが、医師から「360°まで(13枚目まで)欲しい」という細かな部分もコメントがあり、改めて気付かされました。

医師との会話から求められる情報がわかる

ーー3D作成の項目で特に力を入れた項目はありますか?

奥村 項目を絞るのは難しいですが、3D作成の動画を作ったのは大変でした。

ーー3D作成ページでは医師からのコメントが要所要所にあり、臨床医がどんなポイントを知りたいのか?とても参考になります。大変な労力だったと思うのですが、1つ1つの症例に合わせて実際に医師と会話しながら作成をされたのですか?

奥村 特にロボット手術は近年始まった手技なので、どのような視点で何を見たいのか?初めは医師から説明を受けても理解できない事が多かったのですが、手術見学に行ったり、術中動画を見たり、作成した3Dに対して医師から都度良い点・改善が必要な点などの評価をいただき、症例を重ねて理解を深めていきました。

ーー本書には多くの診療科医からコメントがあります。実務ではそれぞれの医師とどんなタイミングでディスカッションを行っていますか?

奥村 レアな症例の時などにこんな画像を作って欲しいと依頼があったりしますが、その時についでにあれもこれもと話が広がり、たくさんの依頼を受けたりします。

また、ある時は、心外医師より大動脈弁の詳細な計測の依頼があったので、私はその術式について教えてほしいと依頼をしていましたがなかなか医師と都合が合わず、1日がかりの心外の手術を終えられた直後に1時間かけてしっかり授業して頂いたこともあります。

ーーカンファレンスには診療放射線技師も参加して情報共有をしているのでしょうか?

奥村 全てではありませんが、カンファレンスには参加しています。脳外科については、もう30年以上カンファレンスに技師が参加し、進行も放射線技師が行っています。

技師間で結果に差が出ないための工夫

ーー3D作成にあたり、領域ごとに色分けのルールが記載されていますが、決定にあたっては医師と相談しながら決めていかれたのですか?

奥村 色については、医師の要望に沿ったり、こちらから提案したりと、診療科により様々で、動脈でも脳血管は白、大動脈はオレンジ、腹部は赤などとなっています。

作成する技師間で大きな差がないように、標準化する意味では色も設定し、プリセットテンプレートを使うようにしています。

ーーすると、新人技師でも解剖を理解して業務にあたる必要があると思いますが、教育の仕方で工夫されていることはありますか?

奥村 症例集があり、まず一通り経験してから実務を行ってもらうにしています。最近ではスタッフで協力して動画マニュアルを用意して見て勉強してもらっています。今回の書籍にも3D作成動画を載せたいと思い10個程度掲載しています。

マニュアルが活きるチームの連携

ーー済生会熊本病院は組織運用が全国でも屈指のイメージがあります。実際にチーム運用はどのようにされていますか?CTとIVRが一緒のチームで動いたいたりするのでしょうか?

奥村 技師が複数のモダリティを担当するようなローテーションを行っていることもあると思います。

また、3D Innovation room(主に手術・IVR支援3D画像を作成するチーム)は各モダリティから選出されたメンバー構成となっており、(今回の書籍ではほぼCTについてだけですが)それぞれのモダリティの知識・特性を活かした画像作成、その画像を作成するためにはどの様な撮り方をすれば良いかなどの情報をモダリティへフィードバックして連携しています。

私はCT・血管造影を兼務していますが、IVRの手技がわかるからこそ目的を明確にしてCT画像の魅せ方、撮り方を指導することができますし、MRI等については無知なので、こういう画像が求められてるんだけど、わかるような画像撮って!と依頼することもあります。

ーーマニュアルから現場でどう活かされているのか、実際のお話をお聞きでき大変参考になりました。今回はインタビューにお答えいただきありがとうございました!


Book Information

どう撮り,何を作成する? 手術支援に役立つ3次元CT画像