注目の方にインタビューする企画「ラジくるインタビュー」
第2弾のインタビューを行ったのは「エコーは心眼」著者であり、自身の会社で教育にも力を入れながら現場の最前線で活躍されている薮中幸一さん。
今回、出版に至る経緯〜現場での活用方法などざっくばらんにお聞きしました。
プロフィール「薮中 幸一 さん」
大野記念病院 超音波検査センター センター長
大阪大学医学系研究科 招へい准教授
Echo House代表診療放射線技師として、30年間にわたり救急病院・総合病院・地方の公立病院などでエコーを中心とした検査業務に従事。40歳後半からは東京大学で臨床研究を行い、昨年で還暦を機に残りの人生は「超音波画像から生まれる知識・技術・人材を結集して、社会に貢献したい」という想いから、現在は病院業務・大学研究・起業と力強くチャレンジしている。
エコーは心眼
消化器領域の超音波検査20症例から学ぶTips
超音波検査の教科書では伝えきれない、臨床現場で比較的遭遇しやすい消化器疾患20症例について、技師と医師の会話を通して各症例のエコー画像を読み解く。意外と知られていないエコー画像の見方と特徴を提示し、他の画像(CT画像・X線画像)と比較することにより、エコー検査の有用性と利便性が理解できる一冊です。
(引用:株式会社南山堂)
ーー当書作成にあたり、こだわった点はどこですか?
薮中実例をもとにした登場人物同士の会話・ストーリーにこだわりました。
堅苦しい表現もストーリーにするととても読みやすくなると思います。本当はマンガにしたかったんです。ただ漫画家が見つからなくて(笑)
(本書では薮中さんが実際に遭遇した症例が取り上げられている)
ーー本の症例には救急症例が多く取り上げられています。本書の病院ではエコーが検査の第一選択になっているのでしょうか?
薮中エコーは急性腹症に有用です。第一選択にCTが選ばれる施設も多い中、私の持論は先ず、エコーで観察すべきです。ただし、技師の技量が問われますので、医師や患者様から信頼されるスキルが必要となります。
エコーは経験値が何より大切
ーー本書を読むことで得られることは?
薮中 技師は経験を積むことでスキルアップしていきます。この本を読めば臨床で遭遇する20症例を書籍から体験することができます。本を通じて学んでおくことで「どこかで見たな…」「もしかしてこれじゃないかな?」というように、初めての症例でもなんとか上手く乗り越えられたりするんです。そのためにこの書籍を読んでいただきたい。
ーー当書ではエコー画像を摘出標本・内視鏡画像と照らし合わせるfollow upの重要性を感じました。心眼を鍛えるためには日常的にエコー検査後の診断・治療までを追うことは大切だとお考えでしょうか?
薮中エコー画像に疑問を感じたら納得(最終結果)するまで、追跡すべきです。そうでなければ、次回の検査で同様の所見に遭遇した際、またも解決することができません。
ーー胃や腸管のエコー検査は空気で観察がしにくい印象なのですが、本(エコーは心眼)を読むときれいに描出されていましたので驚きました。
薮中一般的には前処置はしません(胃の観察に脱気水を飲ませる施設もありますが、私はしません)観察の条件としては観察する深さによって周波数を変えます(具体的にはプローブを変えます)ガスが多い際には、体位変換や圧迫でガスを排除します。
教育者(メンター)に求められること
ーー消化管領域のエコー検査は熟練度が高い技師でないと難しいと感じます。この領域で検査ができるようになるには、どのようなポイントがありますか?
薮中 エコーのスキルには、かなりの個人差があります。そこで、最も重要なことはエコーが好きになることです。スキルの高い技師さんは、エコーが大好きです。第二に、失敗を経験することで、人は成長します。失敗を恐れることなく自分の肥やしにすることです。達人と呼ばれるような技師でも完璧はありません。彼らもまた、常に悩みながら経験値を高めています。
ーーエコーを好きになってもらうために、教育者としてのポイントはありますか?
薮中とにかくエコーを学んでみたいと思わせる環境づくりが大切です。教育する立場の技師(メンター)が、実際にエコーを行うことで早期発見や正確な診断に繋がる検査結果をだすことで、職場(医師、看護師)や患者様から認められ、リスペクトされるような環境作りが重要です。山本五十六の明言、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」ですね。
恩師に敬意を表して…
ーーこの本をどんな人に手にとってほしいですか?
薮中研修医や技師さんの初学者に、是非、読んで頂きたい内容です。もしかして、ベテランの医師や技師さんもあまり知らないことが含まれているかもしれませんので、医療従事者に広く読んで頂ければ幸いです。
ーー最後に本著への思いをお願いします。
薮中数年前(東大を退職後大阪の病院に帰った時)、私が20歳台の若き頃にエコーの指導を受けた消化器外科医から「一緒に本を出さないか」と誘われました。恩師から「今までの経験を書籍にしたい」と言うことで、始めました。しかし、その矢先に、恩師が病気になり1年後に他界しました。亡くなる1ヶ月前、病室で最後にお会いした時、私は恩師に必ず出版すると約束しました。この書籍は、恩師と共に進めていた内容とは多少異なりますが、恩師に敬意を表した内容となりました。今年の9月の命日に書籍の出版を墓前で報告することができ、恩師も天国で喜んでいると思います。
ーー今回はインタビューにお答えいただきありがとうございました!
Book Information
エコーは心眼
消化器領域の超音波検査20症例から学ぶTips